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純正律演奏における音階のピッチ変動の問題に関する考察 [純正律(Just Intonation)]

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 固定音程楽器」wである我が身としては正直、この問題は余り書きたくなかったのですが(汗)、純正律についての議論(論争?含む)が余りにもヒートアップしてしまったことと、この問題は、純正律を学習する上で「避けて通れない道」であることは確かだと思いますので、一音律学習者としての私見を述べたいと思います(あくまでも私見です(汗))。

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 要点:
 第Ⅱ(レ)音か第Ⅵ(ラ)音か?~バンの「完全鍵盤」は正しいのか?~
  →西洋音楽史上「大問題」だった第6音の音程
 実は「(超?)裏技」を使えば出来てしまう「12鍵盤」楽器でのピッチ変動
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 【序論】:
 純正律で最も問題になるのは、俗に?「禁則(の)五度」と呼ばれる純正より1シントニックコンマ狭い五度でしょう。すなわち、純正律の種類にもよるのですが、一般には、主音の全音上(つまりⅡ)全音下(短Ⅶ)の和音を弾く場合にこの狭い五度が発生する訳です。
 で、昨今のネット情報では、この狭い五度の不快な響きを「上手く誤魔化す」ために、トリルを入れる等の「技」が編み出されたなどと噂されている訳ですが、そもそも「音程が自由に変えられる楽器や声楽」では、音程調節によって不快な響きを緩和しさらには純正になるように「シフト」させることができるので、トリルのような「誤魔化し技」を使う必要は本来ない訳です。なので、このような技は、音程が固定された楽器専用のものと言えるのかも知れません。

 一方で、音程が固定された楽器であっても、誤魔化し技が使えない場面が当然に出てきます。その最たる例が「4声コラール」曲を鍵盤楽器(分割鍵盤のない一般的な楽器、以下「12鍵盤(楽器)」とも呼ぶ)で弾く場合ではないか、と考えられます。すなわち、4声コラール曲はゆっくりな曲が圧倒的に多く、速い曲での誤魔化し技である「スタッカート」なども一切使えず、また、このような曲でトリルを入れるのも大いに不自然だし、例えトリルを入れても、ゆっくりの曲では音程の悪さが「ばれて」しまうと思われます。ですので、音程が固定された楽器であっても、純正律を使う場合には、一度はこの問題に正面から取り組んでみる必要があります。

 【本論】:
 純正律を使用しつつ、Ⅱの「禁則五度」の不快な響きを解消させて純正五度にするためには、Ⅱ音(レ)又はⅥ音(ラ)の内の少なくともいずれか一方のピッチを変動(シフト)させる必要があることは前にも書いた通りです。そして、これは、音程が固定されていない楽器や声楽では「当たり前のように行っている」旨の噂を聞きます。
 しかしながら、Ⅱ音(レ)又はⅥ音(ラ)という「ダイアトニック音」のピッチを変動させることは、それは即ち「7音階の基本構造(土台)を(一時的にせよ)歪める」行為とも言えるわけです。
 さらには、派生音ならまだしも、基本音階の構成音のピッチを「頻繁に変える」となると、演奏者が演奏困難になるのみならず、聴いている側も安心して聴いていられなくなるであろうことは、容易に想像できます(実際、合唱の方のサイトで、音階構成音の変動に関し、そのようなことが述べられていた記事を読んだことがあります)。
 従って、このようなピッチの変更はあくまでも「例外的処理」であり、それ故、作曲家も純正律を使う曲の場合は、出来るだけ狭い五度が生じないように工夫して作曲していたものと考えられます。
 器楽曲でも例えば「Ⅱの調へ転調してそのままずっと留まる」曲や「Ⅱ音のオルゲルプンクトを使う曲」などは全く見たことが無いので、純正律前提での曲作りには色々な「不文律」があり、そのような「不文律」の内の多く(ないし幾つか)は、例えミーントーンなどの他の「制限が緩い音律」を前提とした曲を作る場合であっても、伝統的に守られたのではないか、と思えてなりません。

  【具体例】:
 以下は、長調曲でのⅡの禁則五度を解消させる場合に絞って論じます。
 上記のように、Ⅱの「禁則五度」を解消させて純正五度にするためには、Ⅱ音(レ)又はⅥ音(ラ)の内の少なくともいずれか一方のピッチを変動(シフト)させる必要があります。
 で、前に記事で取り上げた「バンの完全鍵盤」では、白鍵の内D音だけを分割していますので、この問題に対してはⅡ音(レ)のピッチのみをシフトさせることで解消していたことが分かります。五度圏図で書くと以下のようになります。

バンの完全鍵盤の一部切り出し図.png

 しかしながら、この五度圏図をよ~く眺めて見ると、何やら不審?な点に気づかないでしょうか。

(折角なので、ここで暫く休憩(笑))

~休憩終わり)
 再開します。皆さん分かりましたよね。

 そうです。この音律構成だと、ニ調の曲を弾く場合に「『主音』二を頻繁にピッチ変動させる必要が生じる」ということです。つまり、主和音(Dのコード)を弾く場合には「低い」ニ音とし、下属和音(Gのコード)を弾く場合には「高い」ニ音とする必要があるのです。これは、五度圏図でのニ(D)音の両側の2つの音すなわちト(G)音とイ(A)音で構成される全音が、大全音ではなく「小」全音であることから生じる現象です。両側の全音が「大全音」であればこうはならないことは、図中のハ音の両側(FGの全音構成)を調べるまでもなく明らかでしょう。
 これが如何に重大な問題であるかを強調するために、再掲補足します。この音律構成だと、ニ調の曲を弾く場合に「『主音』すなわち『ルート音、根音』である二(D)音を、「頻繁にピッチ変動させる必要」が生じる」ということです。ここまで強調すれば伝わったでしょうか?(笑) これ、「ありえない!」と思いませんか、普通の感覚では。「土台がゆらぐ」どころの騒ぎじゃないですよね。

 上記の例はニ調の曲を弾く場合でしたが、バンの完全鍵盤では、ニ調の一歩手前、すなわちト長調曲や、ハ長調曲でト長調に転調してしばらく留まる場合でも同様の問題が生じることが分かります。
 これはシューマン作曲によるト長調の四声コラールの出だしです(ピアノ曲「ユーゲントアルバム」より第4曲目)。
IMG_5759シューマン.JPG


 第1小節の初っぱなから和声進行がⅠ(G)→Ⅴ(D)→Ⅰ(G)→Ⅴ(D)となります。つまり、最初のⅠの和音(Gのコード)を弾く場合には「高い」ニ音とし、次のⅤの和音(Dのコード)を弾く場合には「低い」ニ音とし、これを延々繰り返す必要があるのです。これでは演奏者も聴衆もストレスが溜まってしまうのではないでしょうか?

 このように、バンの「完全鍵盤」は、ニ調をケアしているかのように見えて、実はニ調が全く使い物にならず、それどころかト調(さらにはハ調?)でさえ大きな問題を抱えている、といわざるを得ないのです。
(その意味では、バンの完全鍵盤に対する「これはディスインフォメーションではないのか!?」という私の「疑惑」は未だ捨て切れていないのです。バンの完全鍵盤については「その用途」を深く考察する必要があると思っています。)

 次に、「Ⅵ音(ラ)」のみのピッチを変動(シフト)させる場合を考えてみましょう。この場合はこうなります。
ラ音を変動させる場合.png

 この場合も同様に、Ⅵ音(ラ)の両側(レ-ミ)は大全音ではなく「小全音」なのですが、Ⅵ音(ラ)がシフトすることで問題となるD及びAの和音は、Ⅰ(C)の調から比較的遠い和音であり(つまり属和音、下属和音のいずれでもない)、使用頻度が相対的に少なくなり、「ト調」で留まっている限り、上記のような頻繁なピッチシフトの問題は生じない(少なくとも「生じにくくなる」)と考えられます。

  このような背景からも、音律を勉強する者としては、Ⅱの「禁則五度」を解消させて純正五度にするためには、Ⅱ音(レ)ではなく、「Ⅵ音(ラ)」のみのピッチを変動(シフト)させるのが正式かつ伝統的「作法」なのではないか、と考えざるを得ないのです。

 純正律でのⅥ音(ラ)の音程をどうするかは、音階および音律の歴史上「大問題」でした。すなわち、純正律における音階の歴史では、一般のギリシャ音階と、ギリシャ音階の内のⅥ音(ラ)だけを1シントニックコンマ分(約22セント)上げた「ヨーロッパ音階」と、に大別されます。

IMG_5760.JPG
(「古楽の音律」より(第175頁)) 

 一方、「音律」史においてⅥ音(ラ)の音程補正に関して現在最も有名なのは、キルンベルガーⅡの音律だと思います。キルンベルガーⅡでは、Ⅵ音(A)の音程がギリシャ音階とヨーロッパ音階との「中間値」に設定され、他の白鍵の音程は純正律(ギリシャ音階及びヨーロッパ音階)そのものです。
 また、1曲の構成音の内、Ⅵ音(ラ)に比較してⅡ音(レ)の方が圧倒的に使用頻度が高い傾向があるのは明らかであり、以前に記事にしたハイドンのハ長調ソナタ(初学者用ソナチネ)のように、Ⅵ音(ラ)は比較的慎重に扱われる傾向にあります。
 それ故、Ⅱ音(レ)のピッチ変動は許容されない傾向にあり、逆に、Ⅵ音(ラ)の音程については、ギリシャ音階の「低い」音程とヨーロッパ音階の「高い」音程とを切り替えて使用したり、切り替え使用が難しい場合にはこれらの音程の中間値を使用したりすることが「ある程度(or大いに?)許容されている」と考えることができるのではないでしょうか。(勿論「例外」もあるでしょうけど)

(再び休憩)

---第3部開始-----
 最後に、余談的になりますが、鍵盤楽器での「超?裏技」を紹介いたします。
 これはずっと前からアイデアとして暖めていたものですが、強烈な異端の匂い?がするため(笑)今まで発表を控えていました(汗)。

 上に例示したような四声書法の曲では、派生音を全部は使っていないケースが割と多いです。したがって、このような場合には「12鍵盤」でありながら、「余った派生キー(特に短Ⅶ音)」を利用して「22セント高められたⅥ音(ラ)」を作ることができるのです。このような使い方は、昔の人も行っていたかもしれないし、そうでないかもしれません。(ただ、並以上の音楽家であれば「当然気づく」と思います。この私でさえ(笑)気づけたくらいなのですから。)四声書法曲に限らず「短Ⅶの派生音を使わない曲」素行調査(笑)を行ってみると、もしかしたらその辺りの事情が分かる可能性があるか、とも考えられます。

 上記シューマンのト長調コラールでは、ルート音がGなので、Ⅵ音(ラ)はE音になり、楽譜を調べてみると、「偶然」か「必然」か、その右横の白鍵Fを使わない曲であることが分かります。したがって、短Ⅶ音である白鍵Fの音程を約半音分下げて「22セント高められたⅥ音(E)」を作ることができるのです。
 「E音」と「1シントニックコンマ分高められたE音」(←実際は「不当?もしくは想定外に低くされたFキー音」)とを連続して弾くと、こんな感じです。まるでラモンテ ヤングの「well-tuned piano」みたいでしょ?(笑)


 こんな「奏法」が、声楽や音程可変の楽器で出来るのか?は甚だ疑問ですよね。というか「まず無理」だと思うのですが、関係者の方いかがでしょうか。「純正和音でハモるように音程を作っていく能力」と、このように「ハモらせる対象なしに1シントニックコンマ分だけ上下動させて歌う」能力とでは全く別物と考えられます。
 それに対して、鍵盤楽器では(電子/生楽器を問わず)「調律技術」さえあれば、こんな芸当までいとも簡単に出来てしまうのです。ですので、12鍵盤の鍵盤楽器に関しては、その調律が「醜く切り取られた~」などと卑屈になるべきではなく、実際は「無限の可能性を秘めている」ことにもっと多くの人が「気付く」べきだと思うのです。上記したように、1オクターブ内の「任意の12音」でさえ「十分に使い尽くされていない」現状なのですから。(何度も書いて恐縮ですが(笑)、本当、人間は「気付き」が全てなんです、311「事件」で覚醒した方はわかりますよね?)

 では最後に、こういった「特殊能力」(笑)だけ自慢しても仕方ありません(それこそ「美しくない」(笑))ので、シューマンの4声コラールの出だし4小節を、補正「前」の純正律演奏と、補正「後」すなわちFキー代用での純正律演奏と、を比較視聴してみたいと思います。
 修正対象は、5つ目(バスのE音)と7つ目(ソプラノのE音)です(いずれもⅡのA和音)。

 どうでしょうか。後の修正演奏の方が「美しい響き」であることは誰の耳にも明らかですよね。
 但し、最初の4小節は未だ下属和音すなわちC和音が出てきていないので、E音が「変動している(高められている)」ことは誰にも気づかれない段階と言えます。6小節目からCの和音が出てきてEを本来の「低いピッチ」で演奏する必要が生じますので、耳の良い人であれば「E音のピッチが変動している」ことに気付くでしょう。ですので、作曲家は、そのような場合であっても聴者に「不自然である」とは感じさせないような曲作りをしなければいけないことになります。

 したがって、純正律前提での曲を作る場合、どんな曲であっても「禁則五度」の箇所には細心の注意を払って作曲していただろう、と考えられるのです。

 


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